トランスクリエイションって…?

執筆:
POPA

マーケティング/セールスコンテンツの翻訳に求められる「トランスクリエイション」とは?

  • 翻訳は難しい
  • その翻訳の目的は?
  • そうか、トランスクリエイションだ!

 

翻訳は難しい

これは、「トランスクリエイション」に関する最良のブログです。あらゆる角度からの示唆に富む洞察を紹介し、トランスクリエイションを行う上での注意点や落とし穴、コツやポイントを網羅していきます。

 

突然ですが、上の説明文を読んでどう思いましたか。「なんかちょっと大げさだな」というふうに感じませんでしたか?

 

この文章は、ブログを書くにあたって参考にした『The Little Book of Transcreation』という本のAmazonでの紹介文を参考にしたものです(もちろん、実際にそういうブログにしていこうという思いも込めています!)。

原文を紹介します。

Bursting with all kinds of thought-provoking insights into the creative translation process, this book contains examples of successfully transcreated campaigns, embarrassing blunders, cultural faux pas and pitfalls to look out for, interesting quotes, tips and tricks and everything in between.

 

「all kinds of thought-provoking insights」や「and everything in between」という言葉は、どちらも日本語としてはあまり馴染みのない表現です。やや直訳調の冒頭の文章に違和感を覚えるのは、こういった表現をそのまま使用しているからでしょう。

英語としては魅力的な紹介文でも、そのまま日本語に訳すと与える印象が変わってしまう。翻訳に従事する方ならよくご存じでしょうが、こういうことはしょっちゅうあります。というかこれが翻訳が常にあたる壁です。

細かいことを言うなら“This is a dog”と「これは犬です」はかなり違う文章です。なぜならアメリカ人が“Dog”と聴いて思い浮かべるものと日本人が「犬」と聴いて思い浮かべるものが違うからです。アメリカ人とオーストラリア人でも違います。もちろん、同じ文化圏に属していても、個人個人によって“Dog”が意味するものは変わってきます。つくづく思いますね。翻訳って難しいなあ。

 

その翻訳の目的は?

テクニカルなドキュメントの翻訳では、原文の辞書的な意味を正しく伝えることが主な目的ですから、訳文が与える印象の違和感はあまり問題になりません。

しかし、このちょっとした違和感が結果を大きくわける分野もあります。ずばり、広告やマーケティングのコンテンツ、およびWebサイトの翻訳などです。

とても単純な例ですが、「最高の~」という形容がある文化圏においては信頼の証左として受け取られるとしても、別の文化圏では逆に不信感を招いてしまう可能性がある、ということです。

 

繰り返しになりますが、同じ文化圏でもターゲットの層によって与える印象は変わります。20代前半の男性層にウケがいいキャッチコピーでも、50代後半のユーザーからしたら品がないと感じる、というケースは大いにあり得ます。

商品やサービスを売ったり紹介したりするためのセールス文章の翻訳では、原文の意味を正しく伝えることよりも、セールスを伸ばすことが主な目的になります。基本的には。

これは広告に限らず、今流行りのコンテンツマーケティングのためのWeb文章などにもあてはまります。

海外本社の英語ブログの内容をそのまま日本語に訳して日本でのマーケティングに役立てているケースを多く見かけますが、そういったブログ記事を読み進めると最後の最後で唐突に、冗談とも機知ともつかない一文を突きつけられることがあります。筆者のユーモアやウィットをのぞかせて共感を得るのは英語では自然なスタイルですが、日本語に無理に置き換えた結果、読者に奇妙な読後感を与える結果になっています。これではお客様との関係強化というコンテンツマーケティング本来の目的に最適とは言えません。

セールスを伸ばすためには、読者の信頼を獲得する必要があります。そして、読者が信頼を置く基準はそれぞれの文化によって驚くほど違います。この差に適応させ、コンテンツを読者の心に響くかたちで他言語化するためには翻訳(=translate)するだけでなく、創造(=create)する作業が必要になります。これが、トランスクリエイション(transcreation)の考え方です。

 

そうか、トランスクリエイションだ!

マーケティングにおいて、トランスクリエイションがいかに大切であるか、なんとなーくお分かりいただけたでしょうか?もちろん簡単な作業ではありません。このプロセスを疎かにすると、せっかくのグローバルキャンペーンが致命的な結果を招く、ということにもなりかねません。

このブログでは、トランスクリエイションの失敗例や成功例も紹介しながら、主に日英/英日翻訳に焦点を当て、グローバルマーケティングにおいて欠かすことのできないトランスクリエイションという作業について掘り下げていきます。

翻訳者のみならず、翻訳を発注するバイヤー企業の方や海外ブランドの国内展開、日本ブランドの海外展開を仕事とする方々にもお役に立つ情報を発信していきます。ご期待ください。

次回は「意訳とトランスクリエイションの違い」についてです。トランスクリエイションの例として字幕翻訳が挙げられることがありますが、この二つの違いについても考察します。

 

ポイント

  • 翻訳は正解のない世界
  • セールス文章の目的は読者の心を動かすこと
  • 異なる文化の読者の心を動かすための翻訳=トランスクリエイション

 

英語翻訳の依頼・外注をお考えの方へ

執筆:
POPA

  • 翻訳者経験3年
  • TOEIC情報なし
  • 英語検定情報なし

トランスマート実績

2016年3月に大手翻訳会社を退職し、現在は自営で翻訳とライティングを行っています。
大学では文章表現を専攻しました。フォーマルな文章からくだけた表現まで、文脈に応じて適切な日本語訳をご提供します。特にキャッチコピーやイメージコピーを含む広報資料などは、最初から日本語で書かれたかのような文章に仕上げます。
ITヘルプデスクとしての勤務経験があり、IT翻訳も得意としています。