前回の記事では、ブログ翻訳の需要が高まっている背景とその需要に応える方法として抄訳を紹介しました。今回はクライアントの許可を頂いたので、私がお手伝いしている企業ブログを実例としてご紹介します。
Memsourceというクラウド型翻訳支援ツールをご存知でしょうか。比較的新しい会社ですが、シンプルな操作性とクラウドならではの利便性が人気を呼び日本でもシェアを伸ばしているので、名前を聞いたことある方や使用されている方も多いかと思います。
Memsourceはチェコの会社であり、メインのWebサイトは英語です。ブログサイトもあり、そちらではMemsourceの新機能や便利な活用法、翻訳業界の動向などが紹介されています。
日本でのシェア拡大に伴い日本窓口が開設され、縁あって私も主に翻訳関連でお手伝いさせていただくことになりました。
日本での認知度向上のためにはすでに用意されているブログを活用したいとこですが、すべての記事を一から翻訳するとなると、相当なリソースが必要です。そこで私が行っている作業が、先述の抄訳です。
記事の内容にもよりますが、丁寧に翻訳していく作業に比べ、一読して大事なところだけ書き起こしていく作業を行うことにより、4分の1から半分程度の作業時間で1つの記事を公開することが可能になります。
そしてこの手法の最大の魅力は、一から日本語で書き起こしているので、翻訳っぽさが低減されることです(翻訳者というよりライターとしての手腕が問われますが・・・)。
予算を抑えるという意味では機械翻訳も現実的な選択肢になってきていますが、機械翻訳したブログ記事と、要約ではあっても日本語で書き起こした記事とでは、明らかに後者のほうが読者の心に響きます。そして、読者の心に響かせること、それこそがコンテンツマーケティングのドキュメントの主たる目的です。
私がこのようなサービスをMemsource社に対して提供できるのにはいくつかの理由があります。
まず第一に私自身がMemsourceのユーザーであることです。日頃からさまざまな翻訳支援ツールに触れており、中でもMemsourceをメインで使用しているのでその機能や特徴についてはよく知っています。だからブログの元記事を一読しただけで、どこがユーザーにとって重要な情報かを瞬時に判断できます。
そしてもう一つ大事な点が、Memsource社の方々と直接コミュニケーションがとれるということです。彼らが掲げる自社製品の強みやターゲットに対するアプローチを理解しているので、より的確に日本語でも書き起こすことができます。
私の知る限り、こういったサービスを提供する翻訳会社はありません。翻訳会社としてこうした要約翻訳のサービスを提供することは難しいかもしれません。なぜなら、一般的な翻訳会社では翻訳作業者とクライアントが直接やりとりを行うことは珍しいからです。
クライアントの意向を正確に汲んで適切に要約すること、そして抄訳の意図をクライアントに伝え、翻訳としては穴だらけにも見える成果物を評価、信頼してもらうには作業者とクライアントの直接のコミュニケーションが不可欠であると感じます。
今回はトランスクリエイションの一つの形態として実案件をご紹介しました。コンテンツマーケティングという言葉自体は旬を過ぎた感がありますが、私はこういった抄訳サービスの需要は今後さらに高まるのではないかと予想しています。
【トランスクリエイションに関する過去のブログ】
2016年3月に大手翻訳会社を退職し、現在は自営で翻訳とライティングを行っています。 大学では文章表現を専攻しました。フォーマルな文章からくだけた表現まで、文脈に応じて適切な日本語訳をご提供します。特にキャッチコピーやイメージコピーを含む広報資料などは、最初から日本語で書かれたかのような文章に仕上げます。 ITヘルプデスクとしての勤務経験があり、IT翻訳も得意としています。