「トランスクリエイションとはなんぞや」というのが本ブログのテーマですが、今回は実際に私が行っているトランスクリエイション要素が強い翻訳作業についてご紹介します。
それはブログ記事の翻訳です。
しばらく前からコンテンツマーケティングという言葉が盛んに使われています。これは、読者にとって価値のあるコンテンツを主に無料で発信することで見込み客を獲得していくというマーケティング手法です。不特定多数の人々を対象とした従来のプッシュ型の広告よりも、より低予算で自社製品に潜在的な興味を持つ人々を惹きつけることができるので、数年前から大きな注目を集めています。
コンテンツマーケティングにもいろいろな種類がありますが、もっとも気軽に始められるのがコーポーレートブログでしょう。自社製品に関連する良質な記事を無料で公開することで、自社ブランドの認知と信頼を高めることができ、社内に定期的にブログ記事を書ける人がいればお金をかけずに始めることができます。
記事の質も大事ですが、とにかく数が多いほうが効果が上がるので、国内外の多くの企業がコーポーレートブログを充実させることにけっこうな労力を割いています。そして、充実した内容と記事数を持つブログは確実に集客に役立ちます。
さて、グローバルに展開する企業にとっては、これほどの集客力を持つサイトがあるのだから、それを海外市場でも活かしたいと考えるのは当然のことです。
私も、外国企業の日本支社から「本社のブログを日本語訳してほしい」という依頼や、日本の観光関連のお店から「店舗ブログを英訳したい」といった相談を受けることがあります。
しかし、実際に翻訳の仕事につながることは稀です。なぜなら、そういった相談をくださる担当者の意に反して、翻訳の料金が高いからです。
仮に1,000文字程度の記事が100個あるブログを1文字10円で翻訳するとしても、100万円という額になります。予算をかけない広告手法としてブログによるコンテンツマーケティングを行っているのですから、この金額を快諾する企業はほとんどありません。
そこで、私がときたま代替案として提示するのが抄訳です。抄訳を辞書で引くと、「原文の一部を抜き出して翻訳すること」とありますが、ここでは簡略化した翻訳、という意味です。
具体的な手順としては、文章全体の意味を汲んだ上で、数字や事実は違えることなく、日本語で新しく書き起こすという作業を行います。
さて、それがどうして代替案となりうるのでしょうか。次回は、実際の案件をご紹介しながらトランスクリエイションの一例としての抄訳について掘り下げていきます。
【トランスクリエイションに関する過去のブログ】
2016年3月に大手翻訳会社を退職し、現在は自営で翻訳とライティングを行っています。 大学では文章表現を専攻しました。フォーマルな文章からくだけた表現まで、文脈に応じて適切な日本語訳をご提供します。特にキャッチコピーやイメージコピーを含む広報資料などは、最初から日本語で書かれたかのような文章に仕上げます。 ITヘルプデスクとしての勤務経験があり、IT翻訳も得意としています。